山行記録/個人山行/2009-07-24/南アルプス・北岳バットレス

Last-modified: 2010-03-16 (火) 23:25:09 (2959d)

山行記録/山行一覧/2009上期

山域南アルプス・北岳バットレス(Dガリー大滝〜ピラミッドフェース)
日程2009年 7月 24日 - 7月 25日
メンバーL.まるお、黒板五郎

 行動記録

 7/23東所沢にて待ち合わせし、甲府昭和ICにて中央道を下りる。芦安に近づくにつれ雨足が強くなってきた。芦安の各駐車場は1/3くらい車が停めてある。平日なのに意外に登山者が多いのに驚く。第1駐車場付近の仮眠施設(市営・南アルプスロッジ)にて仮眠する。なかなか快適な仮眠施設で今年は7/1〜8/31の間オープンしているらしい。利用時間は23時-7時。僕らは翌朝5時のバスに乗る予定なので0時頃には就寝した。

 朝起きてみると外は土砂降りで同じ仮眠施設に泊まっていた人たちもどうしようか迷っている。結局4人しか出発せず、他の人は車でどこかへ消えていった。僕らは1泊分の食料しか持っていないので例えば白根御池小屋で停滞は難しい。天気予報を頼りに今後の予定を相談し明日の方が今日より雨量はマシなので今日の夕方に白根御池小屋へ入り、明日の朝に登ることに決定した。食料は1泊分しか持っていないので、とりあえず今日は朝食を食べるため下界へ下る。そして10時頃にまた芦安へ戻ってきてバスに乗り11:30に広河原へ到着。雨は止んでいて空は曇っているが明るい。

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 広河原からは大樺沢経由で歩くこと2時間30分で白根御池小屋へ到着。テントは3張りしかないが小屋泊まりのツアー客は30名くらい居る。白根御池小屋は近年改築されてとてもきれいな山小屋になっていた。しかし携帯電話は各社繋がらない。小屋に衛星公衆電話があり、これで下界と連絡が取れる。とりあえず行程の変更を高坂さんに連絡し、MLに流してもらうようにした。小屋で売っている生ビール\850、缶ビール\500、缶チューハイ\400、今回ビールとワインを下から担いできたので缶チューハイのみ購入し、夕方からのんびり飲み始めた。小屋泊まりのおじさんが生ビール3杯目だといっていたのには驚いた。(3杯で\2550!)

 日が暮れる頃には雨は本降りになり、テントに入って早めに就寝し明日は3:30起き。夜間は止むことなく降っていたようだ。翌日は予定通り3:30に起きる。3:50頃に4名のバットレスパーティが出発していくのを見た。一人は前夜飲み過ぎたのかゲーゲー言いながら出発していった(後にC沢付近で彼らに追いつく)。

 僕らは4:30にテン場を出発し、6:30に4尾根取り付き付近Cガリー大滝前に到着。紫色の大岩を目印に左に流れるのがC沢で、その左にある尾根を登る。さらに尾根を少し登ったところで左に流れるD沢を渡り、尾根上を登って行けばDガリー前に到着するのだが、なぜかC沢沿いに登ってきてしまった。まだ雨は降っていなく空は明るい。ピラミッドフェースも上まで見えている。今日は行けそうな気がした。 

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 4尾根取り付き付近からDガリー下部へ移動する場合、今年は雪渓がまだ沢山残っていたので雪渓を50mくらいトラバースした。今年は雪が多いといわれているが本当に多かった。そのおかげで下部岩壁の1P目取り付きへ移るには、雪渓と岩壁の幅4mのシュルンドをロアーダウンで3mほど降りなければならなかった。実際には尾根の砂利が出ている地点でビレイして1P目取り付きまで30m雪渓を登りシュルンドを3mロアーダウンして取り付きへ到着。そんなことをしている間に天気はどんどん悪化し濃い霧に辺りは覆われ視界30mほどになった。小雨で岩は全て濡れている。1P目取り付きには8時頃となってしまった。

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1P目:丸山リード 登り始めはチョックストンの右側から回り込む。雨で濡れているためホールドがいまいち信頼できないので無理やりヒールフックで上がる。初っ端から結構難しかった。そのあとはダラダラと凹角をのぼりロープ40m位のところでビレイ。ロープがすでに湿っていて重く、体の動きも鈍くなった。以前来た時よりもピンが少ない様子で凹角内も枯葉と土が結構詰まっていて、掘り起こすとピンが結構出てきた。まだシーズン初めだからかもしれない。

2P目:玉木さんリード 引き続き凹角内を登っていく。広いテラス手前にもビレイポイントがあるが、奥まで行き次の壁の下でビレイ。ロープは余るが次のピッチが長いのでここがベスト位置。

3P目:丸山リード 今までよりも壁の傾斜は立ってきて岩はすっきりしてくるが、浮石が多いので丁寧に登る。終了点は大きなバンド地帯の2m下に終了点あり。

4P目:玉木さんリード 右10mに4尾根へ続く崩壊エリアが見える。そして右上へ伸びる草付きバンド。本来ならばこの右上バンドがピラミッドフェースへの入り口だが、大きな勘違いをしてビレイ点から直登して右へ上がっていくルートを指示してしまった。(完全なルートミス発生) このピッチで玉木さんが墜落する。(詳細は後述)

続いて丸山が登るが非常に難しいため、隣ルートの終了点まで登りロアーダウンした。この時ルートミスを確信し、バンドを右上するのが正規ルートとなる。

結局、雨は降り続く様子なので、ここで登攀は中止して下山することに決定。時計を見ると10時を過ぎていた。懸垂下降は3ピッチで1P目取り付きに戻り、そこから尾根の砂利が出ているところまで雪渓のスラブ帯を40mの斜め懸垂をした。フラットソールでつるつるの雪渓を斜め懸垂したので非常に苦労した。(アプローチシューズに履き替え軽アイゼンを着ければよかった)

11:00尾根の安全圏(砂利地帯)に到着し装備をパッキング

12:30御池小屋に到着しテントを撤収

13:00 御池小屋を出発

14:40 広河原到着

15:00 広河原から芦安駐車場行きバスに乗る→金山沢温泉→帰宅

4P目の詳細

1ピン目 ルーフ乗越し下にキャメロットをセット(青ロープ)

2ピン目 ルーフ抜け口にヌンチャク(赤ロープ)

3ピン目 80cm右上にヌンチャク(青ロープ)

4ピン目 1m左上に4mmロープスリング+ヌンチャク(赤ロープ)、この時、青ロープの流れが悪くなったため3ピン目は外す。(赤ロープをクリップすると良いがクリップせず)

5ピン目 1m上の残置スリングにヌンチャク(青ロープ)、5ピン目で軽く落ちるがすぐテンション掛けたので1m程度ズリ落ちる。6ピン目が核心でムーブは右へ2mトラバースして50cm上に残置スリングが垂れている。

6ピン目 なかなか手が届かなかったので、ハンマーでスリングに引っ掛けた後トラバースのムーブに移るがスタンスが雨の影響もあってはじかれ、一瞬ハンマーにぶら下がるが手がはずれる。ハンマーと体を連結する3mmスリングが切れてハンマーは後ろへ飛んでいった。それと同時に玉木さんが落ち始める。左に1mほど振られながら落ちルーフの下まで4から5m墜落 (あと1.5mでグランドフォール)。体のほうは軽い打撲で運動機能は問題なし。

 想定外の距離を落ちた原因は5ピン目の残置スリングが切れていた為である。その下の4ピン目の赤ロープで落下は止まった。通常ならば古い残置スリングにはクリップせずに、自分でワイヤーかスリングで形成すべきである。

 トップを交代し丸山が登るがまともに登ると6ピン目付近は11台のムーブでアルパインではありえないと判断。再度ラインを考え、5ピン目から継続して左上の狭い水平バンドにピンが2本連打あり、そこまで登りセルフビレイ。(後に“日本の岩場・上”で見ると下部フランケ1P、5.10a-6級A1)明らかにルートミスと判り、残置カラビナしてロアーダウン。

今回の問題点と対策

1.ルートミス  経験あるルートだが記憶を頼りにルートに取り付いてしまった。実際ルートミスの背景にはピラミッドフェース中盤の逆層スラブのピッチと勘違いを起こしていた。間違えたルートとバンド右上の2択だということは現地でも把握していたが、どちらが正解か確信が持てなかったので、移動距離が少ない目の前のルートを選んだ。 ルート図はチャレンジアルパインのトポのみで判断していた。(これは下部の記載が不明瞭である)日本の岩場には正確に記載してあるが、持ってきていなかった。

2.不意落ち  実力の限界付近で登っていたらあるかもしれないが、アルパインでは十分余裕を持つ必要あり。基本的にアルパインでは落ちてはいけないし、不意落ちは論外である。

3.取れるピンは全て取る  大事故には至らなかったが、非常に大きなミス。今回ロープの流れが悪くなった為、ヌンチャクとロープの間を1箇所外した。もう片側のロープをクリップすべきだが、クリップせずに通過。落ちた際に一つ上のピンが抜けていたらグランドフォールは確実だった。

4.限界を超えたトライ  頻繁に「落ちるかもー」と言うコールのもと登っていくことは大問題。ビレイヤーである僕も止めなかったのもいけないが、フリークライミングの感覚で登るのはリスクが大きい。今回のレベルのアルパインでは落ちる確率が高かったらトライすべきでない。

5.残置スリングは信用しない  見た目にも古いスリングにヌンチャクをクリップした。落ちた際スリングは切れ、さらに倍の距離落ちた主因である。カラビナがハーケンの穴に入らなかったらリベットハンガーやナッツなどのワイヤー類で対応する。もちろんボロボロのハーケンには頼らずに自分でカムなどをセットしよう。 次のピンで墜落は止まったが、これが外れていたらちょうどグランドフォール、しかし次のピンはクリップしていないのでビレイ点より下まで墜落していた。

6.実力の過信  お互いの実力レベルの確認は必ず実地で確認すべき。山岳会の在籍年数や過去の実績などで判断せず、今現在の実力を把握すべきである。

以上、今回の登攀で気付いた点を挙げてみました。このほかいくらでも問題点はあると思います。実際に困難に遭遇しないと経験できないこともありますが、これを機に今後の山行につながるよう考えてみるのも良いかと思います。

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Q1.

私は濡れた岩とガスのなかどのような話し合い或いは判断で出発したのか聞きたく思います。

A1.

双方の記録にもあるように出発時は回復傾向の天気でした。登っている最中も雨が流れるようなほど降ってきたらやめようという感じで話していました。つまり濡れている程度ならば登るという判断です。実際、4ピッチ目までは小雨で濡れるほどではないので、カッパも必要ありませんでした。岩が濡れているというのは、雨よりも濃い霧で濡れていた為です。

僕の考えの中では、ピラミッドフェース中頃の逆層スラブのスタンスに1歩立ち上がるのがこのルートの核心だとしていました。(果たして雨の中立てるかどうかということ)。標高の高い所でのアルパインは雨が降って当たり前。朝は晴れていても昼から雨という想定で登っています。

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ある程度、議論する事項が明確になったら打ち合わせをしましょう。僕のほうから出せることは記録に書きました。玉木さんのほうからも記録を受け取りました。これで二人の言うことはとりあえず出揃いましたので、あとは第3者が記録を見てどのように思うかで、今回の隠れた問題だ明らかになるのだと思います。集会でやるか、もしくはリーダー会の数人に第3者として見てもらうのがよいと思います。例えば質問の「出発・天候の判断はどうなっていたのか」などの類がいくつか出てくると目標がはっきりしてくるので打ち合わせもスムーズになると思います。

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