山行記録/会山行/2010/夏合宿/北アルプス・剱岳チンネ左稜線

Last-modified: 2010-09-08 (水) 11:11:58 (2727d)
山域北アルプス・剱岳チンネ左稜線
日程2010年8月11日−2010年8月14日
参加者L.こーさか、グレ子

コースタイム

(08/11)室堂(07:42)-(10:45)剱御前小屋-(11:55)剱沢キャンプ場(12:49)-(14:45)真砂沢キャンプ場 曇り

(08/12)降雨により一日停滞 強い風雨

(08/13)真砂沢キャンプ場(02:30)-池ノ谷乗越(06:13)-(07:30)三ノ窓(07:47)-(08:07)左稜線取り付き-(13:30頃)T5-登攀終了(16:41)-(17:14)池ノ谷乗越(17:56)-(20:20)真砂沢キャンプ場 曇り稀に霧雨

(08/14)真砂沢キャンプ場(09:00)-(13:50)別山乗越-(15:40頃)室堂 雨

(記録:こーさか)

こーさかの記録

(08/10) 新宿22:30発のバスで室堂へ向かう。前日の便は降雨のため立山駅までしか入れなかったそうだが、この日は無事に室堂に入ることが出来た。普通のお盆休みより早いためか、一人2座席を占有して快適に睡眠を取ることが出来た。

(08/11) 立山蕎麦の開店07:15を待ってから朝食。おいしい出汁とコシの無い麺で栄養を付ける。同じバスで到着したぶなの会の3人Pに挨拶するとどうやら同じ左稜線狙いで、真砂沢停泊とのこと。ほとんど一緒に室堂から歩き始めた。雷鳥平で休憩を入れた後の雷鳥坂の登りは自分のペースでないと疲れるので、グレ子さんとはバラバラになって歩く。50分歩いたところで待ってみると40分後に到着。ん〜、これでは予定の熊ノ岩まで行けるか微妙なので、共同装備のガス缶大2を引き受けることに。

11:35の無線交信では源次郎に単独で入っていたT地さんと連絡が取れる。既に剱山荘の近くまで下山しているとのことなので剱沢のテン場で落ち合う約束をする。キャンプ場ではボルダーをしながら警備隊の方に明日の天気予報を伺うと、台風が日本海を通過するために朝から雨で昼過ぎから酷くなるとのこと。T地さんが到着するまでに計画の見直しについて考えを巡らす。お疲れのグレ子さんは剱沢に泊まりたかったようだったけれど、台風が通過する明日を行動に当てることになるのでこれは却下。今日は真砂沢に下りることにする。翌日も剱沢キャンプ場に残るT地さんと別れて雪渓に向かって下降開始。雪渓にロープを渡してあるところを越えてからアイゼンを装着し、雪の上をサクサクと下ってゆく。長次郎谷の出合で未練がましく見上げるけれど、今日の時間のことよりも台風が心配になって来た。やっぱり真砂沢に降りよう。

始めて訪れた真砂沢のテン場には快適な水場とトイレがあった。しかし最も感激したのはビールがプレミアムモルツだったこと(350ml@600円と、価格もプレミアムではあったけれど)。 明日の停滞は間違いないのと予定外の酒の補給が出来たので、1.4Lのシングルモルトを節約することなく宴会。

(08/12) 朝から雨で一日停滞。台風は輪島の辺りを通過中のようだ。NHKは高校野球中継を流しており、イニングや試合の切れ目でしか天気予報が流れないのが苛立たしい。二人でトランプは直ぐに飽きてしまう。昼になっても雨が上がる気配が無かったので午後に行動することは考えないこととし、早々に酒を飲み始める。T地さんとの無線連絡で剱沢キャンプ場の暴風雨の様子を聞かされ、やはり熊ノ岩に上がらなくて良かったと思う。ここの状況はそれほど酷くはない。

明日以降の行動は候補が二つある: 1)明日は荷揚げとVI峰のフェース、明後日にチンネ、翌日下山。2)明日は真砂沢ベースでチンネ、明後日は都度考える。天気予報は明後日より明日が良いので、2)を選択した。とにかく今回の目的はチンネ左稜線だ。

日没を過ぎた頃にテントの排水から解放され、明日の成功を祈って眠りに就いた。

(08/13) 1時起床。朝食を摂っている最中に既に行動開始した集団がテント脇を歩いて行く。予定時刻を30分も遅れて僕達も2時半に出発する。長次郎の出合では先行のライトが一瞬だけ見えた気がした。念のためにレリーフを確認し、長次郎谷に入って行く。谷にガスは無く、右手に八ッ峰の稜線が見える。次第にVI峰が現れ、熊ノ岩の下に着く頃には大分明るくなってきた。グレ子さんを待っている時に何パーティーもが抜いて行ったので右俣の詰めを確認することが出来た。熊ノ岩から上で雪渓を離れてガレ場を歩く。暫くすると雪渓の縁を縫うようにしたルート取りになる。雪の上を歩きたいのだが、傾斜がキツことに加えて雪が割れている部分の高さが大きくて危険だ。アイゼンをガリガリ言わせながら、「帰りは面倒だな」と思った。

池ノ谷乗越で一度アイゼンを外し、大嫌いな池ノ谷ガリーを降りる。ズルズルガラガラと降りて行って、最後は少し降りすぎてしまい、右に登り返して三ノ窓。ここで既に装備を調えて上がって来た横浜蝸牛のPに先を譲り、本日のチンネの最終組となる。雪渓のトラバースは傾斜こそキツく無かったがシュルントが厄介だ。このときはガスに巻かれて視界が良くなかったが、前へ進んでゆくとガイドブックで見たそれらしいリッジが現れ、先ほどの蝸牛Pが支度をしているのが見えた。自分達は2P目の高さまで進んで居たけれど雪が薄くて渡れそうにないので、少し戻ってすぐ下のシュルントの端まで行き、そこから降りて1P目の取り付きに到着。靴を履き替えて登攀開始。

どっちがどのピッチをということは事前に決めていなかった。どうせガイドブック通りにはピッチを切れないと思っていたし、なにしろ二人が持ってきた別々のトポでピッチの切り方が違うんだから。1P目はノーロープで、支度を終えた自分から登る。先行が2P目を登り終えたとき、2P目の終了点から声が掛かる。4人が懸垂で戻るから真って欲しいとのこと。お話を伺うと、今日のトップのパーティーで、2ピッチ登ったところで岩が濡れていて、III級でも酷いランナウトで危険なので撤退を決めたとのこと。カムでリードして、最後はハーケンを打っての懸垂だったとのこと。確かに三ノ窓からのトラバースは少し霧雨掛かっていた。しかし風通しは良い岩場なので乾く可能性は高い。「打っていただいたハーケンのお世話になるかもしれません、ありがとうございます」とお礼を言って突っ込むことにする。

2P目: グレ子さんリード。ホールドは大きいけれど濡れている。
3P目: こーさかリード。バンドに上がると先行のフォローの方が、ルートは右だとおっしゃる。自分のリードが間違えたのでクライムダウンさせている最中だった。しかしこちらも右に進むに連れてロープの流れが悪くなり、バンドから左に上がるルンゼに入るのを断念。一度ピッチを切る。グレ子さんに上がってきて貰い、ルンゼの部分のホンの数mをリードして貰う。
4P目: こーさかリード。この頃には岩が乾いてきて楽しい。すっきりしたフェースにガバだらけなので、乾いた岩にスメアを効かせて登る。濡れていたら確かに嫌だな。
5P目: グレ子さんリード。自分はフォローだったしあんまり印象にない。
6P目: こーさかリード。簡単だけれども岩が脆くて気が抜けない。いちいち岩を叩いて浮石を確認しての登攀になった。

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クレオパトラニードルを左に見ながら

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鼻、核心の小ハング越えを過ぎた

このころからピッチが分からなくなってきた。先行がつかえているので支点を共有させてもらったり少し手前で切ったりして、兎に角ツルベでT5まで行ったら、核心ピッチはグレ子さんに回ってきた。彼女は一度フォローで登っているので、リードはFLトライの僕に譲ってくださるとのお申し出を戴くが、もうモタモタしている時間が無いのでここはエースにお願い。先行Pを見ていると左手が無いようでヌンチャクにA0を多用していたけれど、むしろ支点に頼らずに右のカンテを両手持ちで行くほうが良いように見えた。グレ子さんのリードも右寄りにフリーで抜けて行き、自分は更に右寄り。途中からカンテに一度跨るくらいまで寄ってから小ハング下で左上、A0無しで嬉しい。

後は簡単なピッチを急いでこなす。相変わらず残置支点は少なく、岩角にスリングを掛けてランナーを取ることが多くなる。立った(っても緩いけど)フェースから殆ど水平のセクションを繋げるとロープが岩に擦れて流れが悪くなる。そのためにグレ子さんが短めにピッチを切らざるを得なくなった。続くII級程度のピッチの自分のリードは殆どランナーを取らず、フェイスの抜け口、水平部分の中間部で取っただけで、ロープは送電線のよう。これはちょっと反省。水平部分の出口ではフォローのことも考えて取るべきだった。危機意識が薄れている。チンネの頭の5m手前でロープ一杯になったので岩角で支点を作成してグレ子さんを迎える。

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チンネの頭に到着

この時、ロープを畳んだ先行がクライムダウンを終えてコルに下りたところで、彼らはビレイ中に見えなくなった。チンネの頭で遊ぶこともせず、僕らも後を追う。しかし、僕は下降路は直ぐに見つかると思っていてよく調べていなかった。クレオパトラニードルの方にバンド状の踏み跡らしきが見えたのと、八ッ峰の頭経由で池ノ谷乗越に降りるとの勝手に信じ込んでいた。で、そちらに進もうとすると、グレ子さんは先行がコルから三ノ窓側に抜けたのを見たと言う。懸垂支点もあったのでロープを出してガレたルンゼを懸垂。

ちょっとしたバンドに降り立ち、ロープを纏めて池ノ谷ガリーに入るところが、ホンの1mの段差でも足場が無くて悪かった。大大大嫌いな池ノ谷ガリーの、マシな上部とはいえザレを崩しながら詰めて池ノ谷乗越へ。ちょうど無線交信の時間に着くことが出来、剱沢のパーティーにチンネ終了の報告を行うことが出来た。

登山靴とアイゼンに履き替え、ヘッ電もメットに装着して長次郎の下降を開始する。熊ノ岩まで雪に乗ることが無かったので、ここはアイゼンは着けなかったほうが良かったか。なんとか明るいうちに心配していた上部のガレ場を通過して一安心。後は雪渓の上を歩くだけで帰ることが出来る。

テントに到着したのは20:20、実に17時間50分の長丁場を終えた。

二人とも疲労から夕食は摂らず、酒とツマミで打ち上げとなった。明日はAフェースで一本と思っていたけれど、グレ子さんはお疲れでパスだし、自分もどうせ早起きは無理。今晩はゆっくりしよう。

(08/14) 予報に反して朝から雨。お祝いの鰻の豪勢な朝食を頂いてから帰ることにする。剱沢への登りでグレ子さんのペースが上がらず、ここでトロバスの最終便が危うくなる。お疲れのグレ子さんには剱御前小屋に宿泊して貰う。別山乗越ではガスのためかドコモもAUもまだ繋がらず、室堂で待っていてくれているパーティーに連絡が取れない。電源を入れたまま下山すると程なくしてA松さんが電話を掛けて来て下さった。こちらの状況を伝え、扇沢に先に下りて貰う。

雨の降り続ける中を室堂に到着し、扇沢に降りるぶなの大パーティーと分かれて富山に下山。観音湯で汚れを落とし、適当な飲み屋で一人打ち上げ。駅前で装備を広げて乾燥させガラガラの急行能登で朝帰りとなった。

事前に聞いていた通り、チンネ左稜線の登攀自体はそれほど難しくはなかった。しかし前を登っていたベテランの方の話だとハーケンはかなり抜かれていたとのことで、ガイドブックの「残置支点は豊富」は核心のT5の上のピッチ以外はまったく当てはまらなくなっている。自分達が登っているときは岩の状態が良かったからランナウトに任せたが、やっぱりカム、ナッツ類は使えるようなっておかないと。

また、核心は体力勝負のアプローチと下山、そしてやはり天候か。今回は4泊5日、登攀日の3日のうち1日だけでも登れれば良いという比較的余裕を持たせた計画で、そして1日だけ巡ってきたチャンスを拾えたのはラッキーだった。

反省点としては、左稜線終了後の下降路の下調べが充分でなく、ガイドブックの「はっきりしている」という情報以上には具体的に知識を仕入れていなかったこと。下手したらクレオパトラニードルを回っていた。

年間計画を立てた時点からの目標を達成できて素直に嬉しい。次はどこに行くために何をしよう。 (こーさか)